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古い書棚から・・・バッハ―伝承の謎を追う [本]

バッハ―伝承の謎を追う

バッハ―伝承の謎を追う

  • 作者: 小林 義武
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本
前回に続いて今回もバッハ関係の本を紹介します。 
著者の小林義武氏は 、バッハ研究で国際的に有名な人です。
彼の業績のひとつに、バッハが死の直前まで手がけていた作品が「ミサ曲ロ短調BWV232」であったことが氏の筆跡鑑定を基にした研究で明らかになりました。それまではフォルケルなどの伝記によって未完の大作「フーガの技法BWV1080」がバッハの最後の作品とされていましたが、その常識を大きく覆すことになりました。
この本のタイトルなった「伝承の謎を追う」とは、今日残されているバッハの作品の内、どれが真作でどれが偽作かをひとつひとつ証拠を集めて判断していく、あるいは推理していくというような意味です。ある意味探偵ごっこみたいなところがあります。
例えばバッハ自身の自筆楽譜が残されていたとします。当然、自筆楽譜であればバッハ自身の作品と思いたくなるのですが、事態はそう簡単には運びません。というのも当時は今と違って出版される楽譜自体が少なくて手書きコピーによって世間に広まるのが一般的でした。当然、バッハも人様の作品を写譜してはコレクションを増やしたり演奏にそのまま使ったりしていました。時には人様の作品の歌詞だけをかえただけで上演したこともあります。おまけにバッハ家は代々音楽家の家系で多くの音楽家を輩出している関係上、身内の作品が紛れ込んでいる場合もあります。
以上のことからも例え自筆楽譜が残されていたとしても、本当にバッハの真作かどうか調べなくてはいけない場合があるのです。逆に自筆楽譜が残されていなくても楽譜の伝承のしかたによっては真作の場合もあります。
この本では、具体的な例をあげて今までの議論の経緯などを説明しています。
余談になりますが、バッハの音楽には多くの謎が付き纏っています。作品の伝承もそうですし、ここでは触れませんが作品の中にも色々な謎が隠されていたりもします。多分他の音楽家にはない要素のひとつだと思います。そしてそれがバッハの音楽の不安を兼ね備えた魅力のひとつにもなっているような気がします。
「君に、この謎が解けるかね。」
とバッハは微笑みながら我々に語りかけているような気がします。

 

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